2018Mar8 春の夜

  • 2018.03.08 Thursday
  • 03:30

 

 

春の夜

 

 

燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに

   一枝の花、桃色の花。

 

月光うけて失神し

   庭の土面(つちも)は附黒子(つけぼくろ)。

 

あゝこともなしこともなし

   樹々よはにかみ立ちまはれ。

 

このすゞろなる物の音に

   希望はあらず、さてはまた、懺悔もあらず。

 

山虔(つつま)しき木工のみ、

   夢の裡(うち)なる隊商のその足竝もほのみゆれ。

 

窓の中(うち)にはさはやかの、おぼろかの

   砂の色せる絹衣(ごろも)。

 

かびろき胸のピアノ鳴り

   祖先はあらず、親も消ぬ。

 

埋みし犬の何處(いづく)にか、

   蕃紅花色(さふらんいろ)に湧きいづる

       春の夜や。

 

 

中原中也

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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