2019Sep19 秋の朝焼け

  • 2019.09.19 Thursday
  • 18:58

 

 

 

2019年9月19日 04:45

 

 

 

心 象

 

 

松の木に風が吹き、

踏む砂利の音は寂しかつた。

暖かい風が私の額を洗ひ

思ひははるかに、なつかしかつた。

 

腰をおろすと、

浪の音がひときは聞えた。

風はなく

空は暗い綿だつた。

 

とほりかかつた小舟の中で

船頭がその女房に向つて何かを云つた。

──── その言葉は、聞きとれなかつた。

 

浪の音がひときはきこえた。

 

 

 

亡びたる過去のすべてに

涙湧く。

城の塀乾きたり

風の吹く

 

草靡(なび)

丘を越え、野を渉(わた)

憩ひなき

白き天使のみえ來ずや

 

あはれわれ死なんと欲す、

あはれわれ生きむと欲す

あはれわれ、亡びたる過去のすべてに

 

涙湧く。

み空の方より、

風の吹く

 

 

中原中也

初出 「白痴群」第四号 1929(昭和4)年 11月

 

 

 

 

2019Sep10 秋の一日

  • 2019.09.10 Tuesday
  • 07:31

 

 

2019年9月7日10:48 

 

 

 

秋の一日

 

こんな朝、遅く目覺める人達は

戸にあたる風と轍(わだち)との音によつて、

サイレンの棲む海に溺れる。

 

夏の夜の露店の會話と、

建築家の良心はもうない。

あらゆるものは古代歴史と

花崗岩のかなたの地平の目の色。

 

今朝はすべてが領事館旗のもとに従順で、

私は錫(しやく)と廣場と天鼓のほかのなんにも知らない。

軟體動物のしやがれ聲にも氣をとめないで、

紫の蹲(しやが)んだ影して公園で、乳兒は口に砂を入れる。

 

(水色のプラットホームと

 躁(はしや)ぐ少女と嘲笑ふヤンキイは

 いやだ いやだ!)

 

ぽけっとに手を突込んで

路次を抜け、波止場に出でて

今日の日の魂に合ふ

布切屑をでも探して來よう。

 

 

 

 

中原中也

初出 「紀元」1933(昭和8)年 10月号

 

中原中也全集 第1巻

詩 I

1967年10月20日 初版發行

1976年  8月10日 12版發行

角川書店 より

 

 

 

2019Sep7 ぺりかん書房のつるちゃん登場!

  • 2019.09.07 Saturday
  • 19:47

 

 

 

2019年9月7日10時47分 秋の空

 

 

こんにちは

 

秋分の日まであと二週間余りですが、十三夜は来月ですね。

いきなり、つるちゃんで失礼しました!(ただいま『銀座のカラス』再読中なので)

 

しかし、あぁ 〜 何年ぶり、否、何十年ぶりでありましょうか?

いよいよ、遂に待ちに待った! つるちゃんの登場です!

ほんとに懐かしい。

 

松尾はまた早口で聞いた。

「いや、そうじゃなくて、今日あたりおでんとお酒なんかどうかと思ってさ。池袋に安くてうまい店みつけたんだ」「おでんか──、いいなあ」「つるちゃんも一緒に行きたいって・・・」松尾はぺりかん書房に半年前に入社した海老名千鶴の顔を ”どわん” と実に激しい勢いで思い浮かべた。小柄で鼻の先がつんと尖っていてかなり赤っぽい髪を三つ編みにしてお尻に届くぐらいまで長く伸ばしている。町田の会社に行ってはじめて顔を合わせた時一瞬外国人かと思ったくらいエキセントリックな美人だった。「この人つるちゃんっていうんだ。新入社員。まだ十九歳なのに煙草喫うんだ。不良にあこがれてるんだって」その時そう言って町田はのんびりと彼女を紹介した。つるちゃんはあまり笑ったりせず、よく光る眼で松尾をぎらりと見つめ、すこし首を斜めにかしがせながらゆっくりおじぎをした。松尾は瞬間的に頭のうしろのあたりが熱くなるのを感じた。「あの、松尾勇です。えーと町田の古い友人です」・・・ つづく

 

 

 

 

きょうの久保田万太郎さま、

 

  鶯谷志保原

 

 水の音くらきにきこえ十三夜     

 

 久保田万太郎

 

(句集 こでまり抄 成瀬櫻桃子編 ふらんす堂文庫より) 

 

 

 

 

 

2019年9月1日(日)♪ さよなら夏の日〜きょうから長月です… 再読、銀座のカラス

  • 2019.09.01 Sunday
  • 17:29

 

こんにちは

 

 先日のことですが夜が明けたら晴れた空は夏いろから秋いろへ一変していました。

♬さよなら夏の日 … みごとなまでに秋の空でした、山下達郎の世界です。

それにしてもびっくりしました。今年の夏もいきなり居なくなってしまいました。

そして秋がやって来ましたがいい季節ですね。

はい、季節の変わり目です、小まめに水分補給して熱中症の予防と体調の管理に気をつけましょう。

 

 

 

こちらは先日、amz にて見つけて、即、購入したものです(後日、一冊づつ紹介しますが)最近、椎名誠の『銀座のカラス』を再読していますが関連の何冊かも読んでみようと … 。

 

しかし、懐かしいです!

『銀座のカラス』

そのむかし、本書は朝日新聞朝刊に連載(1989年11月〜1991年2月)されていました。それがしにとっては、初めての新聞連載小説でしたがとにかく毎朝、楽しく夢中になって読んだことはハッキリと憶えています(でもスジは忘れてる!)そして、このときの沢野ひとしの挿絵もあっさりとしたタッチが微妙な味を出していて線画の魅力にあふれていました。当然、気に入ってしまい沢野ひとしのファンになりました。

 

 

 

〜 本書のプロフィール 〜

本書は、1991年に朝日新聞社より刊行された単行本を、94年に文庫化した新潮文庫の復刊です。

 

 

 

『銀座のカラス』椎名誠 小学館文庫


 二十三歳の松尾勇は、デパート業界の新聞や雑誌を発行している小さな会社の新米編集者。会社創業以来の人事異動によって配属された編集部で、『店舗経営月報』という、三十二頁、発行部数八百部という地味な雑誌を作っている。勤め始めて約一年、会社が新橋から銀座のビルへと引っ越した直後、松尾に大きな転機が訪れる。前任者の突然の退社により、なんといきなり編集長になってしまったのだ!

といっても部員は自分ひとりだけ。経験もなければ部下もいない松尾の悪戦苦闘の日々が始まった。

椎名誠初めての新聞連載小説として話題を集めた傑作長編がついに復刊(本書より)。

 

 

 

椎名 誠(しいな まこと)

1944年、東京生まれ。作家。写真家、映画監督としても活躍。89年に『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞を、90年に『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。『岳物語』『わしらは怪しい探検隊』シリーズ、「わしらは怪しい雑魚釣り隊』シリーズなど著書多数。2013年より雑誌「とつげき!シーナワールド!!」の企画・プロデュ―スもしている(本書より)。

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、画集・銀座のカラス 本体収納カバーです。

 

 

 

 

 

本書は 1989年11月から1991年2月まで朝日新聞朝刊に連載された「銀座のカラス」挿絵と書き下ろしの文章によって構成されています。

 

画集・銀座のカラス

 

1995年9月5日 初版第一刷発行

著者 沢野ひとし

発行所 株式会社 本の雑誌社

 

 

沢野ひとし

 

イラストレーター、作家。1944年、愛知県生まれ。

「本の雑誌」の表紙イラストを創刊号から担当。

1991年に『猫舐祭』で第22回講談社出版文化賞

さし絵賞受賞。主な著書に『お寺散歩──もう一度

あのお寺に行こう』『さわの文具店』『北京の自転

車おじさん』、作品集に『センチメンタル』『銀座

のカラス』小説に『花の雲』対談集に『沢野字の謎』

など。東京都在住

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この当時はカラオケなんかありませんでした! このようにギターの伴奏とか弾き語りが多かったです。

こちらは、松の字こと「松尾くん」と「つるちゃん」とか? いつも長い髪とスカートを吹き来る風にひらひらさせながら颯爽と歩く「和歌子」さん?だったかな? W.ボトルはダルマですねぇ〜 あんな不味いの?よく飲んでましたねぇ〜!… しかし、この画集は想像以上に作りが立派でいい本でした。めずらしく大満足でありました!

 

 

 

 

 

 

 

 

ありふれた思い出なんてないさ

 

2007年5月15日 初版第一刷発行

著者 沢野ひとし

発行所 新風舎

 

 

もくじ

 

⒈ 少年時代の夢 触っていると 心安らぐ

  ・傘を取り合い、玄関で喧嘩

  ・盆踊りの帰り道とオオカミ男に気をつけろ

  ・少女のいなくなった夏休み

  ・公園のおじさんは人さらい?

  ・公園の合奏に「幸福」を感じて

  ・「少年探偵団」から広がるうわさ話

  ・不良の親玉と食べたハマグリ

  ・少年時代に夢見たギター

  ・初めて聴くギターに体が震えた

  ・アメ横で見た宝の山、高校一年の夏

  ・すべてを受け、すべてを落ちた受験

  ・上野駅は家出人のメッカ

  ・毎夜のごとく葉巻をくわえたバブル時代

 

⒉ 満天の星空 手を振る少年 素朴な原風景

  ・ネパールのミカン売りの少年

  ・ネパールの雪山で「カボチャに乾杯」

  ・八甲田山の温泉宿でのんびりと

  ・大雨の大雪山、テントの中も水たまり

  ・妻との三十数年を思い出す、三伏峠

  ・うっかりすると遭難に・・・秋の登山にご用心

  ・ローソクの火で暖まる、冬の山小屋

  ・雪山でのテント、まるでクマの冬眠

  ・種差海岸の鳴き砂が泣く

  ・ニッコウキスゲと自称「過去を消したい男」

  ・能天気な私が、五十で始めた寺回り

  ・苦しいとき、人は山や海を見たくなる

  

⒊ 母が大黒柱 働かぬ父の 形見はカメラ

  ・父の形見のカメラに「ありがとう」

  ・ハワイにて、亡き母を慕って思わず涙

  ・「軍隊ではこうするのだ」怒れる亡父

  ・父のカミナリが落ちた年末大掃除

  ・病床で好きな山の歌を口ずさんでいた兄

  ・ヒマワリのジャングルと化した夏の庭

  ・南の島より、娘が送ってくれた長寿の塩

  ・祖母にだけ話した将来の不安、小学生の娘

  ・就職を決め、絵から離れていく娘

  ・銭湯帰り、提灯見たさに消えた息子

  ・家族の一員・犬のクロの家出騒動?

  ・火事を知らせて賢いね、クロ

  ・南の島で娘と一年ぶりの再会、クロ大はしゃぎ

 

⒋ 昼からビール 美しい風景 眺めて乾杯

  ・人間最大の娯楽・たばこをやめられた日

  ・朝四時から仕事だし、と昼から飲む酒

  ・立ち飲み酒場で飲むドライマティーニ

  ・これはお父さん、大変な塩辛です

  ・夕飯が鍋だと、家族の雰囲気が険悪に …

  ・実力がある割に謙虚で情が深いダイコン

  ・フランス料理より八ヶ岳高原のキャベツ

  ・何に使うかわからない、海外の土産品

  ・少年の頃から憧れていた万年筆を集めて

  ・毎夜、海を見続ける八戸の友人「X」

  ・思い立ったらふらりと行ける、高尾山

  ・丘陵の雑木林、春の霞は浄土の世界か

  ・子どもの頃に聞いた曲をギターでつま弾く

  

  あとがき

 

 

本書はデーリー東北に連載された「四季の風」を(2005年4月3日〜2006年3月26日)単行本化したものです(本書より)。

 

 

 

 

きょうの久保田万太郎さま、

 

  九月二十六日、十五夜、たまたまゝ浅草にあり

 

 ふるさとの月のつゆけさ仰ぎけり     

 

 久保田万太郎

 

(句集 こでまり抄 成瀬櫻桃子編 ふらんす堂文庫より) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノビタキ 全長: 13.0cm 英名: Stonechat

本州中部の高原や北海道の草原に渡来し繁殖する夏鳥ですが、子育てを終えた秋には本州以南でも草地や農耕地などで渡り途中の冬羽になった姿が見られます。写真はまさにその一場面で、夏羽では黒かった頭部なども既に褐色になり、夏とはかなり印象が異なっています。「ジャッ、ジャッ」「ヒー」などと鳴きます(撮影者: 江口欣照 撮影地: 長野県南佐久郡 2019日本野鳥の会卓上カレンダーより)。 

 

 

壁のカレンダーには、二百十日 白露 十五夜 満月 敬老の日 動物愛護週間 9/20〜26 彼岸 秋分の日 などの文字が記されています。

 

 

 

【今月の有元利夫】

 

 

 

 

 

 

     旅立ち 22.0 × 27.3cm 1978年

 (2019年1月1日発行 新潮社 有元利夫カレンダー2019 より)

 

 

 

 

 

 

きょうも最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

引き続き、熱中症に気をつけましょう!

 

 

 

 

 

    

 

     2009年 夏    京都 三千院にて

 

 

 

2019Aug30 それは突然にやってきました … 空は秋いろ!

  • 2019.08.30 Friday
  • 08:08

 

こんにちは

 

昨日は久しぶりの青空でしたが、見てください!  すっかり秋の空でした。

 

 

 

 

2019年8月29日11時13分

 

 

きょうの万太郎さま

 

 正直にものいひて秋ふかきかな 

 

 

 

 本技には出さなかった本音が、余技には、はばかることなく詠われているわけだ。

万太郎俳句は万太郎の「つぶやき」であり、正直に言った「ひとりごと」なのである。だから万太郎には「私俳句」はあるが私小説は無いと言っていい。石田波郷が「俳句は文学ではない」と喝破した一つの根拠も「私俳句」性を含んだものと言え、万太郎に通じる。

 芥川龍之介は万太郎俳句を評して「市井歎かひの詩人」と言ったが、それは露の玉のかがやきにも似た一句一句のつぶやきだと思う。

(句集 こでまり抄 成瀬櫻桃子編 ふらんす堂文庫より)

 

 

 

 

(2019May27) 村上春樹 特別インタビュー 〜 小説家40年と「騎士団長殺し」… 毎日新聞

  • 2019.08.19 Monday
  • 15:35

 

こんにちは

 

ノロノロ飛行?の台風10号の動きが気になっていましたが・・・ 梅雨明けからは全国的に連日の猛暑です!… 熱中症予防は小まめに水分補給とか。気をつけましょう!

 

ちょっと間があいてしまった!済みませんでした。ちょっとしたトラブル発生の日々でありましたが、人生、いったい全体、何が起きるか知れません!… 70年も生きてるとほんとにいろいろなことが起きるもんですね。誠に人生いろいろであります!(やれやれ)。

 

お元気ですか?

 

さて、本題に入ります、春樹の最終章 膣でありましたね、さっそくスタートです!

… たいへんに遅くなりましてすみませんでした。 

 

 

 村上春樹さん 特別インタビュー  

      小説家40年と

            「騎 士 団 長 殺 し」 

 

 

と題された毎日新聞(2019May27)のインタビュー記事をご紹介します。興味のある方はちょっとおつきあいください。

 

 

 

 

2019年5月27日(月)付 夕刊 毎日新聞

 

 

 

 村上春樹さんの話は、自分が愛する作家たちと自作の関係へと弾んでいった。

 

   ×   ×

——「騎士団長殺し」には「免色渉」(めんしきわたる)という変わった名前の謎の資産家が登場します。「色を免れる」という名なので、多くの人が「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を考えました。

村上 確かにそうですね。でもそれは気がつかなかったな。この免色さんはフィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」のギャツビーへのオマージュなんです。

 

 

—— 確かにギャツビーは好きなデイジーの住む家が見えるところに住んでいますし、免色も自分の娘の可能性がある少女まりえが住む家を望める小田原郊外の山の中の豪邸に暮らしている。

村上 ギャツビーは貧乏から成り上って、人目を惹く生活をします。それが彼の目的だから。でも免色さんは割と普通にやっています。クールに、というか。だからパーソナリティーとキャラクターは違う人です。。ただ状況を借用しただけです。

 

 

—— その免色が「私」に自分の肖像画を描いてほしいとやってきます。免色が絵を描いてもらうことは「交流」だと話す。お互いの一部を交換し合う。「私」も亡くなった妹小径(こみち)に対して、交流を思うし、まりえも同じように考えている。交流という言葉が印象的です。

村上 限られた登場人物しかいないわけだから、彼らが互いに何かを与え合わなくては、物語は成り立ちません。実際に「私」の敷地に穴を出現させるのは免色さんです。彼がいなければこんな話はそもそも起きない。

 

 

  少 し ず つ 与 え 合 う 交 流 の 形  

 

 

—— なるほど。免色が業者を読んで来て、掘ったからですね。

村上 そういう意味では、この物語においてはコミュニケーションが、すごく大切な意味をもってきています。以前の僕の小説には、人々の間のコミュニケーションがそれほどなかったんです。一対一の人間関係の集積でした。登場人物はかなり孤立して、その多くは名前さえ持たなかった。でも書き続けているうちにだんだん、複数の相互交流が書けるようになってきた。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」も、複数の人たちが交流する作品です。

 

 

—— 登場人物は限られていますが、交流という面からすると、「騎士団長殺し」は複合的なコミュニケーションが書かれた作品ということですね。

村上 いろいろな人物が互いに少しずつ与え合うという感覚は、けっこう大事な部分です。「ノルウェイの森」以前は、コミュニケーション自体をあまり信じていない、あるいは頼っていないという作品が中心でした。でも「ノルウェイの森」以降は、コミュニケーションがないと人は生きていけないという世界にだんだんなっていく印象があります。

 

 

—— そして「騎士団長殺し」の大きな特徴は久しぶりの一人称で書かれていることだと思います。

村上 最初は一人称で書き出し、段階的に三人称に移行してきました。

 

 

—— 初期作品の一人称「僕」が印象的です。でも阪神大震災を反映した連作短編集「神の子どもたちはみな踊る」では、すべて三人称となった。

村上 そして「1Q84」は完全三人称の長編です。そしてそこから、もう一回、一人称で何ができるだろうと思ったんです。

 

 

—— 一人称でできて、三人称だと難しいということがありますか。

村上 やっぱりモノローグは一人称の方が語りやすいですよね。一人称は素直に書けるし、読者が「私」に同化しやすい。同化できたなら、作家として嬉しいです。

 

 

—— なるほど。

村上 それに「グレート・ギャツビー」も一人称なんです。あと僕が好きなチャンドラーの「ロング・グッドバイ」も、さらにサリンジャーのキャッチャー・イン・ザ・ライ」も一人称です。これらはみんな僕が翻訳したことがある本なんです。不思議ですね。

 

 

 

 

    

 

 緤斌未い辰僂い離▲淵蹈哀譽魁璽匹鯒悗法◆岾な佞離フカ」について、文芸評論家・湯川豊氏と小山鉄郎共同通信編集委員のインタビューを受ける村上春樹さん=2003年2月11日、神奈川県内で 臑湿紊気鵑翻訳した「グレート・ギャツビー」「ロング・グッドバイ」「キャッチャー・イン・ザ・ライ」

 

 

 

  暗 部 の 先 に「許し」は あ る  

 

 

—— 「騎士団長殺し」の冒頭部に「私」と妻が離婚届に署名捺印したが、「結局もう一度結婚生活をやり直すことになった」とあります。

村上 体内めぐりのように、闇の中をぐるっと回って元通りになるのが話の骨子なので、最初にそのことを示しておきたかった。読者に対しても自分に対しても。

 

 

—— 最初に結論が書いてある長編は初めてでは。

村上 そうですね。これまでの僕の話は、失われれば、失われたままという話が多かったかと思う。でも今回は回復する話なんだと最初から考えていました。だからその宣言のような言葉を冒頭に置くことが、僕にとって大事なことだったんです。

 

 

—— そして、物語の最後には「私が免色のようになることはない」「なぜなら私には信じる力が具わっているからだ」と書かれています。

村上 免色さんは、まりえという少女が自分の子供かどうか、それが分からない人ですね。

 

 

—— 心からわかりたいと思っていない人では。

村上 よその世界と繋がりを持つか、持たないかということの、その狭間にいる人です。何かに自分がコミットしているのか、していないのかということが自分でもよくわからない。自分ではすべてを把握しているように思っているみたいだけれど、本当はよくわかっていない。バランスを保ちながら、狭間を静かに彷徨っている。

 

 

—— そういう免色渉と「私」は違うのですね。

村上 「私」が免色さんと一番違うのは、奥さんのことを好きなことなんです。奥さんが去っていっても気持ちが変わらない。戻ってくれば、もう一度最初からやり直そうと思う人なんです。そういう形のコミットメントを彼は求めている。

 

 

—— 何がそうさせるんでしょうか。

村上 もちろん愛なのですが、それ以上に、人と人との繋がりの信頼感というものが大事なことになります。免色さんには、そういう感覚が欠落しているんじゃないかな。

 

 

—— 騎士団長を殺して、「私」が心の底の暗闇の世界に入っていく場面があります。心の闇を書いてきた村上さんですが、最も深い闇の世界かと思いました。

村上 やはり、一番暗いところを抜けないと、回復はないと思うんです。一度出て行った人を再び受け入れるということは「許し」です。許しというのは、本当に暗いところをくぐって、そこから抜け出すことによって、初めて出てくる感情だと思う。

 

 

—— 暗闇を進んでいく「私」の深い孤独な感覚が身体性をともなって伝わってきました。

村上 許しの感覚は、善とか、悪とか、光りとか、闇とか、そういう判別を越えたものです。それを得るためには、「騎士団長」という「想念」をいったん自らの手で殺す経験が必要です。そうすることで初めて「許し」というものが得られるのではないかという気がします。

 

 

—— 「騎士団長殺し」もそうですが、村上作品は世界中に翻訳され、各国にたくさんの読者がいます。世界の読者たちが、村上作品のどんなところに惹かれて読んでいるのか。村上さん自身はどのように感じていますか。最後にお聞きしたい。

村上 外国に行って驚くのは10代、20代の若い読者が多いことです。日本の読者より、目に見えて明らかに若いです。彼らを含め、外国の読者が求めているのは、ある種の自由さではないかと思います。

 僕の文章はいわゆる文学的な文章ではなく、プレーンな(わかりやすい)自由な文章です。言い換えれば使い勝手のいい文体です。そういう特徴は翻訳されてもたぶん変らないのだと思います。コツさえつかめばそれを用いて、まわりの物事の意味や心情を自由に切り取ることができる。外国の読者たちは、そのユニヴァーサルに自由な感覚を求めているのではないかという気が最近はしています。あくまで直感的な意見ですが。(聞き手は文芸評論家・湯川豊氏、共同通信編集委員・小山鉄郎)

 

 

以上です。

きょうも最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

車の運転は安全第一でお願いします。

ではでは。

 

p.s.,

免色さん、ほんと変わった名前ですねぇ〜!… 実は、めんいろで入力してました!

 

 

 

2019年8月6日 広島 原爆の日 〜 被爆から74年です

  • 2019.08.06 Tuesday
  • 08:15

 

こんにちは

 

今年も、そのときは静かにやって来ました。

2019年8月6日 午前8時15分、広島は被爆から

74年です。

 

 

今年も平和記念公園には行けませんが、

こころから犠牲になられた方のご冥福を

祈ります。

合掌

 

 

 

   

 

     2010年8月14日

 

 

p.s.,

毎年のように感じますが、この国の政治家たちの核兵器廃絶への本気度を疑います!

… 核兵器廃絶への誓いを新たにがんばろう、 H I R O S H I M A  !!!

 

 

 

2019年8月1日(木)梅雨がやっと明けて、きょうから葉月です!

  • 2019.08.01 Thursday
  • 04:43

 

こんにちは

 

今年の梅雨はほんと長かったですね!

2019年の夏がやってきました … 久しぶりに大きな花火大会に行きたくなりました。

 

 

 

 

 

きょうの久保田万太郎さま … お盆も近いし …

 

 

  亡き人に肩叩かれぬ衣がへ     

 

  久保田万太郎

 

 

 

 

 

  

 

カツオドリ 全長: 70.0cm 英名: Brown Booby

国内では伊豆諸島や小笠原諸島、硫黄列島、トカラ列島などで繁殖し、その周辺の海域に生息する海鳥です。魚群を見つけると細長い体勢になって矢のように急降下し嘴から海中に突っ込み捕食します。カツオなどの魚群の居場所を教えてくれる鳥としてこの名が付けられました(撮影者: 石田光史 撮影地: 東京都小笠原諸島 日本野鳥の会卓上カレンダーより)。 

 

 

壁のカレンダーには、立秋 山の日 お盆 原爆の日・Wikipedia 向田邦子命日・Wikipedia 処暑 などの文字が記されています。

 

 

 

【今月の有元利夫】

 

 

 

 

 

 アルルカン 27.3 × 22.0cm 1974年

 2019年1月1日発行 新潮社 有元利夫カレンダー2019   より

 

 

 

p.s.,

ただ今、村上春樹特別インタビューの最終章、膣を書き起こし中です。

いましばらくお待ちください!

コオロギさん、ありがとうございました。

 

 

 

 2019年5月27日付夕刊 毎日新聞

 

 

 

ではでは。

 

きょうも最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

熱中症に気をつけましょう!… (それがしだけかも?)最近、ふと気がついたら部屋の温度が30度! なんてことがよくあります、危ない!

 

 

 

 

 

    

     2009年 夏  京都 三千院にて

 

(2019May22) 村上春樹 特別インタビュー 〜 小説家40年と「騎士団長殺し」… 毎日新聞

  • 2019.07.29 Monday
  • 05:21

 

こんにちは

 

なんか東海地方は梅雨が明けたとか?

誠!(銀座のカラス 椎名誠)関東はまだかぁ〜 !

きょう明日にも梅雨明けとなりそうですが、早く明けて欲しい!

・・・ 2019年の夏が来る!

         

 

    

      2019年5月22日夕刊 毎日新聞

   

それがし、どこかで見た顔だと思っていたら … 思い出しました、詳しいことは知りませんがあのスケートボードの堀米優斗(ほりごめ ゆうと)さん! どうです、うりふたつでしょ?! … 2019Aug3 18:45 add.         

 

 

さて、本題に入ります ⇨ 

 

その前に、『 生身の人間を通過させる物語を書きたい!』と熱く語っています。

がんばれ! 村上春樹!

 

 

 

     村上春樹さん 特別インタビュー                                                       

     小説家40年と「騎士団長殺し」 

 

 

 

と題された毎日新聞(2019May22)のインタビュー記事をご紹介します。興味のある方はちょっとおつきあいください。

コオロギさん、いつもありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 2019年5月22日付夕刊 毎日新聞

 

 

 

 

村上春樹さんの話は「殺し」と「再生」について展開していった。

 

   ×  ×

 

—— 「騎士団長殺し」の題名通り、この小説では騎士団長が殺されます。「ドン・ジョバンニ」の冒頭で一度殺される騎士団長が、小説の中でもう一度殺されるわけです。

村上 僕の小説のタイトルに「殺し」という言葉が入るのは初めてかと思います。でも、例えば「ノルウェイの森」も自殺する人が多い物語ですが、その人たちは、自分で自分を殺す人たちなのです。あの小説でも死ぬこと、つまり殺すことが大切な意味を持っていました。

 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」でも「世界の終りに入っていくことは死と同じです。「海辺のカフカ」で「僕」が深い森に入っていくのも死の世界に入っていくことです。

 

 

—— 「1Q84」では、カルト宗教のリーダーが自分を殺せと、女主人公の青豆に語っています。彼女が愛する天吾を生き残らせるためにはリーダーを殺せと言うのです。

 今度の「騎士団長殺し」では、行方不明になっている少女まりえを取り戻すためには、騎士団長を殺せと、騎士団長自身が言います。そして、主人公が出刃包丁で騎士団長の小ぶりな心臓を刺し突くのですね。

村上 もちろん物語の中のことですが、その殺すときの感触が大切になります。「海辺のカフカ」ではジョニー・ウォーカーが猫をメスで殺します。あの切り裂く感触が重要なのです。物理的な手応えというか。

 

 

     死 と 再 生 の 物 語 フ ィ ジ カ ル に 

 

 

——  さらに詳しく、話していただけますか。

村上 殺す行為は、神話的に言えば再生です。何かを殺して、再生する。父親殺しという神話もありますよね。何かを殺すことで新しい生命が生まれる。それは神話ではよくある話です。死んだ体から芽が出てきて、みたいな。日本の古事記にもそんな話がありますね。

 

 

——  死と再生の話ですね。

村上 現実の世界で、生身の生きている人間を殺すことはできません。しかし、「騎士団長殺し」のような物語の中で「殺す」ということを人は疑似的に体験することができます。これは物語の重要な役割の一つです。そしてこの物語において「イデア」としての騎士団長を「殺す」ことは、象徴的な行為としてどうしても必要なのです。

 

 

 

     

 

 

 

 

——  他の村上作品にも共通したことですか。

村上 僕は小説を書き出した頃からフィジカルな効果というものをすごく目指していました。例えば「風の歌を聴け」の読後に「ビールがすごくのみたくなった」という人が多かった。それは僕にとってとても嬉しいことでした。

 

 

——「ノルウェイの森」もそうですか?

村上 「ノルウェイの森」ではセックスの感覚をできるだけリアルに、直接的に書きました。そのことでいろいろ批判されたり、嫌われたりしましたが、でも触知できるリアルさは、僕にとってすごく大事なことなんです。それを抜きにしては物語は書けない。

 日本の近代小説には、直接的な感触がリアルに書かれたものは意外と少ないような気がするのですが、僕が全作翻訳したレイモンド・カーヴァ―の小説には直接的な感触がたくさん描かれていますよ。そういうところから少しづついろんなものを学んできました。

 

 

——「騎士団長殺し」では、出刃包丁の刃先が騎士団長の細い体を突き抜け、背後まで突き出る。騎士団長の白い衣服も主人公の手も、真っ赤な鮮血に染まっています。

村上 実際に自分で包丁を持って、相手を突き刺し、血しぶきが飛び散る手応えが、物語という通路を通して読者にじかに伝わることが大切だと思っているんです。あくまで一つのシミュレーションとして。フィジカルな部分からしか生まれてこないものがあります。

 

 

    心 の 闇 に 向 き 合 う 軸 を   

 

 

——  この小説の主人公は画家です。油絵の肖像画を描いています。

村上 油絵を描いたことがないので、本で学んで書きました。でもあとで何人かの絵を描く人に訊いたら、間違ったところはとくにないと言われました。絵も小説も、ゼロからものを創りだすという基本は同じですから。

 

 

——  主人公が滞在する家は高名な日本画家・雨田具彦の家です。その雨田が若いとき、ウィーン留学中に、ナチス・ドイツによってオーストリアが併合されます。その体験が書かれています。また同じ頃に、雨田の弟である継彦が日中戦争に従軍して体験した南京戦のことも描かれています。

村上 物語は主人公が暮らす家の敷地から騎士団長を掘り出すところから、大きく動き出します。一種の過去を引っ張り出してよみがえらせる話です。

 

 

——  騎士団長は「歴史的な繋がり」「過去からのメッセンジャー」かもしれないと村上さんはおっしゃっていました。

村上 どれだけ穴を掘って隠しても、出てくるときには出てくるんです。僕らは歴史というものを背負って生きていて、それはどれだけ隠しても必ず外に出てくる。歴史は、自分たちが背負うべき集合的な記憶なのだと、僕は考えています。

 

 

——  村上さんは、戦後の1949(昭和24)年生まれですね。

村上 国家の論理によって大きな戦争がおこなわれ、人々が殺し合った生々しい記憶が、まだ空気に残っていた時代でした。戦争が今も絵空事ではないという意識は強くあります。僕らが固い地面だと思っているのは、実は実は軟らかな泥にすぎないのかもしれないです。

 

 

——  戦争のような人間が持つ暴力性は現代社会の中でもありますか。

村上 僕が小説の中で、手探りで用心深く扱ってきた、心の底の魑魅魍魎や闇の世界が、今のSNS(会員制交流サイト)とかのインターネットの仕組みの裏から、我々の表の世界にじわじわと忍び出してきている気がします。

 心の底の闇の世界に潜む暴力性のしるしのようなものを、日常的なものごとの中に感じないわけにはいかないのです。過去から、そんなものがよみがえってくるような恐ろしさを感じることがあります。

 

 

——  そのような社会の中で作家が果たすべき役割はどんなことでしょうか。

村上 僕ら小説家は自由に物語を作っていく。でもその自由さの中に一本の筋として、自然なモラルが無くてはいけないと思います。基準となる「想念」をしつらえていくのは小説家の責務です。たとえそこでどろどろの悪が描かれているとしてもです。

 

 

——  心の闇の世界を探る仕事では、1995年に起きたオウム真理教信者による地下鉄サリン事件の被害者らへのインタビュー集「アンダーグラウンド」がありますね。

村上 それを書いている時、小説家として、麻原彰晃が信者に伝えた物語みたいなものに、打ち勝つ物語を作り出さなくてはいけないと思いました。オウムの時代には宗教に力がありました。でも現代では宗教よりはSNSの方がもっと直接的で強力な拡散力を持っているように感じます。SNSそのものが悪だというわけではないけれど、そういう力が現実に機能していることを忘れてはならないでしょう。

 

 

—— 「騎士団長殺し」はそのような力と対抗する物語でもありますか。

村上 SNSに表れる暴力性はあくまで断片的で、繋がりを持っていません。僕は個人的には物語というものは、長ければ長いほどいいんじゃないかと考えています。それは少なくとも断片ではないからです。そこには一貫した価値の軸がなくてはならない。そしてそれは時間の試練を乗り越えなくてはならない。

 

 

——  物語の力ですね。

村上 言葉を通して、何かを実際あった出来事のように人に体験させるのは、小説にしかできないことです。そういう物語を経験するかしないかで、人の考え方や、世界の見え方は違ってくるはずです。生身の人間を通過させる物語を書きたい。小説が持つ、その力に本当に期待しています。(聞き手は文芸評論家・湯川豊氏、共同通信編集委員・小山鉄郎)= 膣 は27日掲載

 

 

きょうは以上です。

 

 

p.s.,

最終章の 膣 は近日中にアップします! コオロギさんへ、ウナ電だぁ—! 

 

 

 

 

ではでは。

 

きょうも最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

車の運転はどうか安全第一でお願いします!

 

 

 

 

 

(2019May20) 村上春樹 特別インタビュー 〜 小説家40年と「騎士団長殺し」… 毎日新聞

  • 2019.07.22 Monday
  • 00:33

 

こんにちは

 

 

 

 

 

      京都アニメーション 放火事件  

      心からお悔やみ申しあげます

      合掌

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ数日前から、朝晩、しっかりと蒸し暑くなってきたように感じます。

そろそろ梅雨明けですかね?

ご覧の通りに関東地方に掛る梅雨前線は風前の灯前線?

最早、よいお歳を ──となっていますが用心に越したことはありません!

最新の情報に注意しましょう!

それでも、あと少しで夏がやって来ますよ 〜!

 

 

 2019July21 気象庁サイトより http://www.jma.go.jp/jp/g3/

 

 

 

 

 久しぶりですね、村上春樹へのインタビューです。コオロギさん、ありがとうございました … しかし、今回もぐずぐずしてしまい、少々薹が立ってしまいました … ご容赦のほど。

 

さて、本題に入ります、

 

村上春樹特別インタビュー                                                     

小説家40年と「騎士団長殺し」 

 

と題された毎日新聞(2019May20)のインタビュー記事をご紹介します。興味のある方はどうぞお付き合いください。以下、記事全文です。

 

             

 

 

 

 

  2019年5月20日付夕刊 毎日新聞

 

 

 

 

 村上春樹さん 特別インタビュー                                                  

 小説家40年と「騎士団長殺し」

 

 

 今年デビュー40年を迎えた作家・村上春樹さんに東京都内で会い、インタビューをした。最新長編「騎士団長殺し」で書きたかったこと、40年間の自作を貫き大切にしてきたもの、小説の描き方の変化、さらに現代社会の中で物語が果たす重要な役割と小説家の責務などを巡って、村上さんは率直に語った。(聞き手は  文芸評論家・湯川豊氏  、共同通信編集委員・小山鉄郎  )

 

 

意識の底の魑魅魍魎を探る

 

 

 

 

 

   

村上 ちょうど40年前の5月に、群像新人賞をもらいました。授賞式は確か5月8日。会場は新橋の第一ホテルでした。

 

 

── 40年間、現役で出ずっぱり。夏目漱石でも作家活動は10年ほどです。休まず小説を書き続けてきた、本当に珍しい作家ですね。

村上 10年くらいごとに節目があって、その節目ごとに小説や文章のスタイルが変化してきて、自分でも書いていて飽きなかった。いつも新しい目標があった。それがよかったのではないかな。

 

 

── その多くの作品のなかで文庫が出たばかりの長編「騎士団長殺し」についてまずお聞きしたい。

村上 これは題名が最初なんです。 もちろんモーツアルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」から思いついた題ですが、「騎士団長殺し」という言葉の不思議な、不穏な響きに心を惹かれて、そういうタイトルで日本を舞台にした物語が書けないものかと、そこから始まったんです。

 

 

── 題名だけですか。

村上 「海辺のカフカ」のときもそうですよ。「海辺のカフカ」というタイトルが先にできて、そこからどういう物語ができるだろうかと考えていくんです。だから物語が立ち上がって、実際に書き始めるまでにけっこう時間がかかります。先に題が決まらなかったのは「ノルウェイの森」ぐらいかな。あれは最後まで題名が決まらなかった。

 

 

── 確か「雨の中の庭」も題の候補だった … 。 

村上 それと、今回は上田秋成の「二世の縁」という物語が、どこかで繋がらないかと思いました。

 

 

── 「春雨物語」の一話。地中から即身仏(断食死し、ミイラ化した行者)を掘り出す話ですね。

村上 東北を旅して幾つかのミイラを実際に目にしたことがあります。たまたま京都の古本屋でミイラの作り方みたいな内容の本を見つけて読んだりもしました。

 

 

──「海辺のカフカ」にも、上田秋声の「雨月物語」が出てきました。

村上 秋声は好きです。とくに「二世の縁」が好きなんです。即身仏を掘り出したら、ろくでもないやつになっていたいう話。上田秋声という人は世の中をすねたひとだから、そういう屈折した話を書くんです。ただの怪異譚ではない。 

 

 

── なるほど。

村上 僕の父親の実家は京都の浄土宗のお寺です。父親が死んだときに、やはり浄土宗のお寺の住職がお経を読んでくれたんです。その住職と話したら、そのお寺には秋声の墓があるというので、お願いして見せてもらいました。みるとお墓に蟹が彫ってあるんです。なぜなのかを聞いたら、世の中をすねた秋声が、横にしか歩けないものを墓に彫ってくれと言い残して、死んだんですって。

 

 

── おもしろい話。

村上 秋声は晩年、そこの寺でちょっとお世話になっていたようです。

 

 

── その秋声「二世の縁」と「騎士団長殺し」が重なっていく…。「騎士団長殺し」は、主人公が住む家の敷地内の雑木林を掘ると、昔にあった「穴」が出現する物語。

村上 僕が書く話は、無意識というか潜在意識というか、意識の底にあるものを探求していくことが、自然にテーマになってしまいます。意識を掘っていくと、その底にあるのは一種の魑魅魍魎です。そういう暗闇の中から何かを引っ張り出してくるのかというのは、最終的には勘に頼るしかないですよね。意識を集中して勘に身を任せるしかない。ロジックやら前例に頼っているわけにはいきません。ある意味危険なものですから。

 「羊をめぐる冒険」では「羊男」でした。「ねじまき鳥クロニクル」では「井戸<壁抜け>していったところにある世界」でしたし、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」では「やみくろ」でした。

今度は「騎士団長」が出てきたわけです。

 

 

 

 

   

 

 

 

 

  内と外 入れ替えること

 

 

── 騎士団長が登場する場面を心待ちにして読みました。身長60造曚匹如△わいいですね。

村上 あまり大きいと扱いがたいへんなんです。どうしても威嚇的になりますしね。小さい方がコンパクトで、集中的で扱いやすいんですよ。すべてのサイズが均等に縮小されている。一つの存在ではあるけれど、日常からは隔絶されている。

 

 

── 「海辺のカフカ」ではフライドチキン店の人形であるカーネル・サンダーズやジョニー・ウォーカーという人間ならざる存在が登場しました。でも、これだけしばしば登場して、物語を動かしていく人間ならざる存在は初めてです。

村上 確かに騎士団長のようにずっと出てくるのはなかったですね。

 

 

── その騎士団長は自分は「イデア」だと宣言しています。つまり「観念」だ、と言っている。

村上 その通りなんですが、意味を一つに固定するのは無理があると思います。書き終えてから思うことですが、騎士団長は登場人物たちのオルター・エゴ(分身)の集合体かなとも思うんです。それぞれの人物の違う側面を映す鏡のようなものかもしれない。

 それともう一つは、歴史的な繋がりというか、過去からのメッセンジャーかもしれない。ただし、そういうのはどれもみんな一つの可能性であって、正解は僕にもわからない。読者に其々考えてもらうしかない。

 

 

── 中立的な存在のように書かれていました。

村上 善なる存在とは言いませんが、悪ではないですよね。そういう価値観を超越した「導く者」でもあると思います。そして誰にでも見えるものではない。見えるものにしか見えない。

 

 

── その騎士団長の言葉遣いが印象的。「あらない」という言葉をつかうし、相手が1人しかいないのに、いつも「諸君」と語りかけています。

村上 そういうのをどう訳せばいいのか、翻訳者たちはずいぶん困ったみたいです。

 

 

── 常に「諸君」と語りかけられる主人公は、騎士団長には「二人称単数」がないみたいだと感じている。そして「あらない」は「ある」の否定形で、やっぱり観念的な存在だと思わせる言葉です。

村上 そうです。ドイツ語の哲学書の翻訳書みたいな感覚もありますね。「あらない」はドイツ語の「ニヒトザイン」(存在しない)という感じですかね。僕は翻訳をずっとやっているので、一つの言葉をいろんな形に置き換えることは割と慣れています。だから自然とそういうものが浮かんでくるのかもしれない。言葉の響きって、僕にとってはすごく大事なんです。音楽の影響もあるかもしれないけど。

 

 

── たくさん翻訳もやり、海外に行くことも多い。長期間、外国に滞在したこともある。でも村上作品の長編はすべて日本を舞台に書かれてきました。この「騎士団長殺し」も日本が舞台です

村上 僕は、「内なるもの」と「外なるもの」とを入れ替えていくことに興味があるのかもしれない。例えばこの小説では、西欧的であるはずの「騎士団長」が、日本の飛鳥時代の衣裳で登場します。だから読者もこれはいったい何だろうと、その違和感に興味を持ちます。彼が「ドン・ジョバンニ」そのままの格好で出て来たら話にならないですよ。

 

 

── 確かにそうかも。

村上 僕がデビューした頃は、海外渡航ものみたいな作品が多かった。でも僕はそういうものにはあまり気持ちを惹かれなかった。それよりは意味の交換作業みたいなものに興味があったんです。精神的物々交換というか。そのためには小説言語の洗い直しが必要でした。既成の文体ではそんなことはとてもできなかったから。

 

 

── その日本を舞台にした作品が、海外に翻訳されていくわけですね。

村上 古代日本の衣裳をまとった騎士団長という「イデア」「観念」が、文化の違いがあっても移行可能であるということだと思います。

 一方で同じ観念であっても、それが根付く土壌によって、意味の違いが出てくる。そのズレ方と重なり方というものに興味を持って書いているのです。 

は22日掲載 

 

 

今回は以上です。

 

 

 

p.s.,

i 先日のこと … 15年間使い続けた docomo から rakuten へ引っ越しました。いくらなんでもたまにしか利用しないスマホに、ひと月、8000円は高過ぎる!〇〇サービス?〇〇値引き?小出し小出しのせこいやり方にいい加減、切れました!とてもじゃないけどつき合いきれませんでした!docomoかしこもグッバイ! そこでひと月1500円の楽天モバイルへ引っ越しました!  SIMの差し替えとメール設定に少々戸惑ったけど、難なく終了できました … よかったらみなさんもご一考を!

 

今回、携帯番号はそのままですが、メールアドレスは変更となりました! docomoに違約金 8000円は取られるし、でもこの歳になるとメールソフトよりも LINE が単純で解り易くて … 会話の前後のつじつまが合って使い易いし重宝しています!なのでメルアドの変更は痛くも痒くもなし!ダメージはまったくありません!… しかし、LINE はほんとに便利ですねぇ!今や世界中で4億人ものひと達が利用してるとか!

 

 

 

ii   今回のインタビューについて個人的な感想をひと言 … 騎士団長のつかう「あらない」… 云々、この辺りから俄然興味が湧いてきたように思います。スタートしてからしばらくはどことなく、のら〜りくらり感が強くて言っていることは理解できるけど、いまいちフォーカスが貧弱で退屈していたけど・・・ 次回の が楽しみであります!

の原紙はコオロギさんからはとっくの昔にいただいています。今日明日にでもがんばって書き起こしができれば・・・あっ、タラればは止めておきましょう! はぃ、がんばるのみですね。

 

 

 

iii こちらが 版であります、はぃ! 日々、書き起こしにがんばります!

     少々、お待ちくだされ!

 

ところでこちらの春樹はずいぶんと若い!であります! 因みに 1987年9月7日、東京・千駄ヶ谷にて。このとき「ノルウェイの森」刊行時で共同通信のインタビューを受けていました。

 

 

 

 

  2019年5月22日付夕刊 毎日新聞

 

 

 

 

iv 先日、小学校6年生のときのクラス会に参加してきましたが、残念なことに地元のとある宗教団体に乗っ取られておりました? 完全に私物化されておりました …

 

 

 

 

 卒業してから60年が経ち、懐かしさもピークに!この日は楽しかったけど、参加者は激減していました! (こんなところでイヤな話で済みませんね!) みなさんに於かれましてはどうかお気をつけください! … と個人的にですが危惧の念を抱きます。

しかし、歳を重ねるといろんなことが起こります。ねぇ、拝啓 佐藤愛子様  弊blg. 「九十歳。何がめでたい」佐藤愛子著

 

 

ではでは。

 

 

以上です!

きょうも最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました。

車の運転はどうか安全第一でお願いします。

 

 

 

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